不妊予防と治療支援に関する研究
目的
結婚年齢の上昇に伴って、わが国で不妊の検査・治療を受けたことのある夫婦は4.4組に1組へと増加し、生殖補助医療で生まれる子どもの割合も14人に1人(2020年)となっています。不妊症は有病率の高い疾病であることに加え、治療の身体的・精神的・経済的負担が大きく、働き盛りの女性の労働への影響も大きいものです。
不妊症は「気づき」から「治療の終結」まで、あらゆる局面において社会の影響を大きく受ける疾病であるため、公衆衛生学的視点に立った研究が不可欠です。私たちは、不妊症に悩む方を少しでも減らすこと、また、患者さんへのより良い支援のあり方を提案することを目的に、様々な社会医学的研究を行っています。
研究内容
1.プレコンセプションケアに関する疫学研究
プレコンセプションケア(妊娠前からの健康づくり)は、将来の不妊症予防と健康な妊娠出産、次世代の健康、そして本人の健康長寿にもつながる新しい保健活動です。しかし、プレコンセプション(妊娠前)に着目した疫学研究は、国内ではまだ少ない状況です。妊娠前の女性に加え、男性にも対象を広げた研究を実施し、不妊症の予防につながりうるライフスタイルの解明に努めています。
2.妊孕性に関するヘルスリテラシー研究
不妊症の原因はさまざまですが、加齢、性感染症、肥満など、予防可能な要因によるものもあります。私たちはこれまで、妊孕性(生物学的な妊娠しやすさ)に関する健康教育が、妊娠を考える男女の行動変容につながることについて明らかにしてまいりました。現在は国際共同研究グループの中で、学校性教育の現状把握や性教育教材の評価等を実施しています。
3.不妊治療に関する医療政策的研究
令和4年度から不妊治療に対する医療保険の適用が拡大され、医療の標準化や質の向上に向けた取組の強化が求められています。特に、患者さんの安全・安心を真に確保するための情報開示のあり方について、様々な立場からの議論と検討が必要とされているところです。私たちは、医療機関の適切な情報開示のあり方について、国内外の調査を通じた医療政策的研究を行っています。また、今後の不妊治療政策の基礎となる、「国際基準に則った不妊症の有病率」を推定するための全国調査を実施しています。
共同研究機関:
秋田大学大学院医学系研究科 衛生学・公衆衛生学講座
秋田大学大学院医学系研究科 産婦人科学講座
熊本大学教育学部
国立成育医療研究センター 他
研究に関する情報
下記の臨床研究を実施しております。この研究は、2020 年7 月から2023 年3 月までの間に秋田大学で実施した「秋田プレコンセプションコホート研究」で収集されたデータを用いて行います。
このような研究は、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和3 年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1 号、令和5 年3 月27 日一部改正)」の規定により、研究内容の情報を公開することが必要とされております。
この研究に関するお問い合わせなどがありましたら、以下の連絡先へご照会ください。
[研究課題名] 「秋田プレコンセプションコホート研究」において取得したデータによる分析研究
[研究機関名・長の氏名] 北海道大学大学院 医学研究院長・畠山 鎮次
[研究責任者名・所属] 前田 恵理・北海道大学大学院 医学研究院 公衆衛生学教室
[既存情報の提供のみを行う機関・責任者名・機関の長の氏名]
秋田大学大学院 医学系研究科 衛生学・公衆衛生学講座・野村恭子・羽渕 友則
[研究の目的] 本研究の目的は、「秋田プレコンセプションコホート研究」において収集したデータを用いて、プレコンセプション期(妊娠前)の女性の環境化学物質への曝露や生活習慣と妊孕性(妊娠しやすさ)との関連を分析することです。
[研究の方法]
○対象となる方
「秋田プレコンセプションコホート研究」に参加された方
○利用する情報
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初回調査で収集した研究対象者に係る情報:身長・体重・血圧・尿検査結果・血液検査結果(健康診断結果)、婦人科検査結果、血球分画、甲状腺機能(TSH, FreeT4)、赤血球中葉酸濃度、血中金属類(総水銀、セレン)、総PCB 値、インスタント食品やプラスチック製品との関連が深い尿中ビスフェノール類やスチレンオリゴマー代謝物等の測定結果、生活習慣に係る情報(労働環境、飲酒、喫煙、加熱式たばこ、サプリメント摂取状況、魚介類摂取等)、既往歴、食物摂取頻度に関するアンケート(BDHQ)結果
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参加後6 か月毎に行う追跡調査で収集した研究対象者に係る情報:月経、妊活、妊娠の状況
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妊娠された方については分娩までの追跡調査で収集した研究対象者に係る情報:妊婦健診や出産の状況
これらの情報は、専用フォーマットを用いて郵送または電子的配信にて、秋田大学大学院 医学系研究科 衛生学・公衆衛生学講座から北海道大学大学院 医学研究院 公衆衛生学教室へ送付されます。
[研究実施期間]
〇実施許可日(情報の利用開始:2024年9月頃)~2028年3月31日
この研究について、研究計画や関係する資料、ご自身に関する情報をお知りになりたい場合は、他の方の個人情報や研究全体に支障となる事項以外はお知らせすることができます。
研究に利用する方の情報に関しては、お名前、住所など、個人を特定できる情報は削除して管理いたします。また、研究成果は学会や学術雑誌で発表されますが、その際も個人をを特定できる情報は削除して利用いたします。
*上記の研究に情報を利用することをご了解いただけない場合は以下にご連絡ください。
[北海道大学の連絡先・相談窓口]
北海道大学大学院医学研究院公衆衛生学教室 担当者:前田恵理
住所:北海道札幌市北区北15 条西7 丁目 電話:011-706-5068
[秋田大学(既存情報の提供のみを行う機関)の連絡先・相談窓口]
医療機関名:秋田大学大学院 医学系研究科 衛生学・公衆衛生学講座 担当者:野村恭子
住所:秋田県秋田市本道 電話:018-884-6087